金利の勉強をしていると経済に与える日銀(金融政策)の影響力の大きさをすごく感じました。
『金利や利上げって何』についての記事はこちら↓にあります。

国の経済が低迷するということはその国の株式市場も低迷することを意味します。
日銀が金融政策の舵取りを誤らなければ、日本の設備投資額が20年も低迷することがなかったかもしれません。
国際比較すると日本の設備投資は低迷しています。
設備投資がなければイノベーションは起きませんし、経済も成長しづらいです。

今回は利上げの時代・金利ある時代となった今、日銀の金融政策が経済や株式に与える影響力について勉強し直しました。
- 日銀の金融政策
- 経済や株式市場に与える金融政策の影響力
目次
日銀金融政策の役割
物価をコントールし、雇用を増やすこと
「中央銀行の役割」は物価をコントロールし経済を安定させることです。
しかし「中央銀行の金融政策の役割」はそれだけではありません。
「金融政策の役割」は物価をコントロールし経済を安定させることにより、雇用を増やし失業率を減らすことです。
日銀による金融政策
日銀が金融緩和を行う方法としては2つです。
- 政策金利である「短期金利」を下げる
- 量的緩和を行う
①は政策金利である「短期金利」を下げることで市場に出回るお金を増やします。
「政策金利」の「短期金利」とは無担保コール翌日物のことを指します。
無担保コール翌日物とは
「今日貸して明日返してもらう」
「今日借りて明日返す」
という無担保での短期資金貸借のことです。
日銀は金融機関が持つ日銀当座預金の残高をコントロールし、無担保コール翌日物の金利を上下させます。
当座預金の残高をコントロールした結果、例えばA金融機関が法定準備預金を下回りそうになった時には、資金豊富なB金融機関から無担保コール翌日物の金利でお金を借りて対応することになります。
②は日銀が政府発行の国債やリスク資産を購入することで市場に出回るお金を増やします。
一方金融引き締め策は、この反対で金利を上げて世の中に出回るお金を少なくします。
中央銀行は物価をコントロールすることが仕事と考えているので、基本的に金融引き締めに前のめりになります。
金融機関同士での日銀当座預金の移動では資金の総量(金融機関が保有する日銀当座預金残高の総額)に変化はありません。
しかし銀行券の発行・還収により日銀当座預金と銀行券が相互に形を変える場合(銀行券要因)や、金融機関の日銀当座預金と政府の間で財政資金の受払が行われる場合(財政等要因)には、金融市場における資金の総量が増減します。
引用元 日本銀行HP 教えて!にちぎん 無担保コールレート(オーバーナイト物)とは何ですか? 資金過不足とは何ですか?
利上げとは
そして利上げとはこの政策金利の短期金利を上げることです。
現在日銀は景気が過熱していると判断し金融引き締めを行なっているということです。
長期金利は市場が決めます。ただ短期金利の上昇につられて上昇していきます。
実質金利とは
日銀がコントロールする政策金利は短期金利であり「名目金利」とも言えます。
では「実質金利」とは何か。
それは物価を考慮したものを「実質金利」と言い、以下の計算式で表すことができます。
実質金利=名目金利ー予想インフレ率
マイナス金利とは何だったのか
例えば日銀が名目金利を0%に誘導し予想インフレ率が2%であれば、実質金利は0%-2%=-2%となります。
この状態をマイナス金利といいます。
金融機関は日銀の当座預金口座に法定準備預金額を積立しなければなりません。
マイナス金利政策とは、その法定準備預金額を超える部分(超過準備)に対しての金利をマイナスとしたのです。
つまり、金融機関に対して日銀の当座預金にお金を置いていないで市場に出すように促した政策だったのです。
マイナス金利を実施したときに、量的緩和政策と矛盾していると言われていましたが、市場にお金を供給するという意味で同じなので両政策は矛盾していません。
そして現在は2024年3月からマイナス金利を解除し、超過準備に対してプラスの金利を適用しています。
日本がデフレ不況に陥った理由は日銀のせい?
日銀は金融引き締めが仕事だと思っているため金融引き締めに前のめりになる
過去の世界の歴史からみると、政府は景気がいい状態を作ることができるため金融緩和の状態を好みます。
程よいインフレは「実質金利」を下げて経済成長を維持します、長期金利の推移と国の経済成長率は似てきます。
しかし日銀は中央銀行としてのDNAや独自の文化から金融引き締めによりお金を減らすことを「良し」と考えているため、引き締めに対して前のめりになります。
失われた20年、デフレの泥沼化
金融自由化により財政政策から金融政策の時代になりました。
変動相場制では、財政政策より金融政策のほうが効果が出やすいという「マンデル・フレミング効果」というマクロ経済学の理論が存在します。
ここに投資家が金融政策を学ぶ意味があります。
金融政策が主役の時代になったのに、日銀はそのことを理解できていなかったのです。
バブル経済では物価指数の上昇ではなく資産指数の上昇が真因であったのに、真因を見誤り金融引き締めを実施しました。
資産価格はインフレ目標の定義に入っていないので、金融政策は一般物価だけをみて判断するべきなのです。
またリーマンショックでは、世界各国は金融緩和が実行していたのに日銀は金融引き締めを行いました。
失策を繰り返したことで日本経済は「失われた20年」へと突入したのです。
日銀による金融政策の舵取り次第で国の経済の行方が大きく変わります。
頑ななに金融緩和をしなかった結果・・・
日銀が頑ななに金融緩和をせず、金融緩和をしたとしても中途半端に行い、増税で自滅してしまいました。
その結果・・・
デフレ脱却できず→実質金利上昇(実質金利=名目金利ー予想インフレ率)→民間投資増えず→消費停滞→賃金削減→デフレ脱却できず
負のスパイラルに陥り民間の投資が低迷する以上、大きなイノベーションが起きるはずもなく国際競争力も低迷していきます。
デフレから脱却できず経済成長率は先進国で最低となり、名目賃金は1990年の30年前と比べて欧米が2倍以上に伸びているのに対して日本は1.1倍です。
これがデフレを脱却できなかった結末です。
根本的な原因はデフレであり、民間投資が増えなかったのはその結果でした。
何度も言いますが、経済が低迷すると株式市場も低迷します。
こういった事実から日銀がしっかりと金融政策の舵を取ることが日本経済にとってどれほど重要であるかが分かります。
中央銀行には独立性と説明責任が必要
イギリスでは政府に「目標の独立性」があり、政府が目標を決めてイギリス中央銀行に指示を行います。
イギリス中央銀行がその目標達成に向けて「手段の独立性」を行使し政策を考えて実行していきます。
日銀の独立性について「金融政策の独立性」と「業務運営の自主性」が法律に定められています。
つまり「目標の独立性」と「手段の独立性」の両方を手にしています。
日本は選挙で選ばれた国会議員が何もできず、日銀総裁と副総裁からなる日銀金融政策決定会合で全てが決まってしまう世界では例を見ない異常な状態です。
ただ歴史からみて中央銀行の独立性は必要です。
なのでその独立性を担保するために、「責任」という意味で日銀は『説明責任』をもっと果たしていくべきではないだろうかと思います。
続きは②で
少し長くなりましたので2つに分けようと思います。
一旦ここで終了します、続きは②を見てください。

参考文献
- 明解!金融講義 世界インフレ時代のお金の常識・非常識 (2025) 高橋洋一 ソシム株式会社
- 日本銀行HP 教えて!にちぎん