投資哲学

市場価格のとらえ方

バフェットが徹底的に学習すべき科目の一つとして「市場価格のとらえ方」を挙げていましたので、学び直してみました。

市場価格とは株価のことです。

「市場価格のとらえ方」を言い換えれば「株価とどう向き合うか」ということです。

株式投資で成功するには株価とどう向き合うのかが重要になってきます。

「投機するということは違法でも不道徳でもないが・・・

・・・たいていの場合、その投機家の懐を膨らませることにもならない」

バフェットは短期予測を使って株の売買決定を行う人を批判する時に、グレアムのこの言葉を好んで引用するそうです。

「市場価格のとらえ方」を学び直してまず一番にハッとさせられたのが、「バフェットは株式市場や景気変動を予測するつもりはない」ということです。

我がファンドはバフェットの投資方針を真似しています。

もちろんバフェットが株式市場や景気変動を予測しないことは理解しているつもりでした。

しかし最近我がファンドは中央銀行の金融政策やマクロ経済や為替などの周辺知識を持つことが株式投資に役立つと考えていました。

でも実際は周辺知識が株式投資に役に立つであろうという考えは、長期的な企業の内在価値に注目するではなく、(短期的な)株式の動向に注目することを意味していました。

株式の動向は何を参考にしても理解できないことを知っているはずなのにです。

また株式の動向に注目して売買することが投機家の行いだということも理解しているはずなのに、考えていることは投機家と同じでした。

それを今回ハッと気付かされました。

改めて肝に銘じなければならならないのは、一般的な知識や見解を学ぶことにより自分の意見を持つ分にはいいが、投資判断の参考にはならないということです。

バフェットは株式投資で成功するにはベータ値やポートフォリオ理論やオプション価格の決定などを理解する必要はないと、実際はこのすべてを知らない方がうまくいくかもしれないと語っています。

ただマンガーがバフェットのことを「地上で最高の学習マシン」であると形容したことやバフェットとマンガーの成功の裏には並々ならぬ読書量があることから、学ぶことの全てが投資判断の参考にならないとは思いません。

景気の動向に注目している金融政策やマクロ経済といった周辺知識については、少なくとも投資判断の参考にならないということです。

グレアムは短期市場のことを「ミスターマーケット」と呼ぶ

バフェットは市場価格について分かりやすく説明する時にグレアムが創り出した「ミスターマーケット」の話をしてくれます。

バフェットは自分自身を株式市場の感情から引き離すときにこの話を心に留めておくことがとても役に立っているようです。

ミスターマーケットの話を簡略化すると以下のようになります。

「ミスターマーケット」は毎日あなたのところにやって来て値付けをしてその価格で、彼があなたの持分を買うか、あなたが彼の持分を買うかどうか聞いてくれます。

しかし好業績で財務状況が安定した企業があったとしても、ミスターマーケットはその価格にきちんと反映しません。

その提示する価格はミスターマーケット自身の感情によって変わるのです。

あるときはとても興奮した様子で馬鹿げた高い価格を提示したり、またあるときはこの世の終わりであるかのような低い価格を提示してくれます。

そんな躁鬱状態な表情を見せるミスターマーケットの良いところは、あなたが提示された価格を気に入らなくて無視をしても何もなかったように次の日にあなたのところに来るところです。

要はその価格で売買するかしないかはあなたの自由なのです。

ただミスターマーケットがあなたの助けになってもあなたを手引きすることはありません。

あなたにとってミスターマーケットが役に立つことは、彼の知恵ではなく、彼の資力のみです。

ミスターマーケットの話から学ぶべき点は、ミスターマーケット(株式市場)は気まぐれ野郎であり、役に立つのは彼(株式市場)の知恵ではなく資力である点です。

そもそもミスターマーケット(株式市場)をあなたの助けにするにはあなたが企業の内在価値を知らなければなりません。

その内在価値を理解していればあなたはいつでも優位に立つことができるのです。

その理由はグレアムの別の言葉が示す通り「短期的にみるとマーケットは票数計算機にすぎないが、長期的で見れば体重計」だからです。いずれ株式市場は企業が持つ価値に合致していくからです。

いつ起こるかではなく、何が起こるかに主眼を置く

そして株式市場はこうなるだろうと他人の予測に従うのでなく、企業はこうなるだろうと自分の予測に従うべきなのです。

(バフェットは株式市場がこうなるだろうと予測しないだけなく意見も持たないのです。)

誰もが専門家が値上がりするという予測に基づいて高値で買おうとは思わないはずです。

ミスターマーケットにいつ上昇するのか聞いても何も教えてくれませんので、企業はこうなるだろうと自分が予測したことが正しいかどうかなのです。

正しいかどうかの結果はあなたの企業評価の正確さによります。

つまり、マーケットでいつ起こるかではなく、企業で何が起こるのかに着目することが重要ということです。

最後は「市場は予測できないこと」を甘んじて受け入れる

明日、数年後、数十年後の将来の株式、債券、金利、コモデティの価格は誰にも分かりません。

ではどうすれば良いのか、答えは簡単です。

それは皆目見当が付かないことを甘んじて受け入れることです。

そうすることで無駄なモノに貴重な時間と労力を掛けなくて済みます。

同時に自分が理解し魅力を感じる企業に対して、分析することに一層集中できるのです。

今回改めて市場価格のとらえ方を学び直してみて、株式市場との距離感は「ミスターマーケットを相手にするな」「気にならないぐらい離れること」、仮に気にしても「ミスターマーケットの性格を思い出すこと」が大切ということを感じました。

株価は購入前に確認するぐらいのレベルに早くなりたいものです。

以上  「株式市場との距離感 〜市場価格のとらえ方〜」でした。

目指せ何歳になっても学び続ける本の虫、学習マシン!

参考文献①
  • バフェットからの手紙【第三版】ー世界一の投資家が見たこれから伸びる会社、滅びる会社(2014) ローレンス・A・カニンガム パンローリング株式会社

参考文献②
  • バフェット 伝説の投資教室 パートナーへの手紙が教える賢者の哲学 (2016) ジェレミー・ミラー 日本経済新聞出版社

参考文献③
  • マンガーの投資術 バークシャー・ハザウェイ副会長チャーリー・マンガーの珠玉の言葉ー富の追求、ビジネス、処世について(2017) デビッド・クラーク 日経BP社